Tibetan Furniture
Home チベット家具と歴史、文化、くらし

チベット家具と歴史、文化、くらし

 
 チベット家具は、チベットの文化やくらしが色濃く反映されており、チベット人の生活だけでなく、美意識や精神文化をうかがうことができます。
 チベット人の生活スタイルは、大きく分けると、①遊牧民、②定住生活を日常とする一般人および僧侶らの生活、の2つに分けられます。
 現在まで継承されている家具の機能やデザインは、テントで生活を営む遊牧民の床での生活文化から生まれました。その後、定住民らにも広まったチベット家具は、チベット各地に広がり、同時にアジアでの交易やインドからチベットに入った仏教文化から強く影響を受けたといわれています。
 
 チベット家具は、その大胆な装飾が目を引きますが、その装飾が美術的な価値をも同時に決定します。使用される模様やモチーフは非常にバリエーションが豊富ですが、チベットでは、タシタゲ(八吉祥)と言われる長寿、財運、幸運などを象徴したシンボルが特に好まれています。唐草文様など世界的に使用されているモチーフも取り入れられていますが、これらは、もともとチベット民族にあったものだけでなく、チベット仏教や中国や隣接する諸地域との交易を通じてアーティストらが刺激され、装飾デザインが発展したといわれています。

 特に7世紀から12世紀頃にかけては、西はペルシャ・ササーン朝、北はシルクロードのウイグル、東は現在の内蒙古自治区にあたる契丹文化、そして中国王朝の影響を受けており、チベットの寺院には、これらの文化との交流を示す数多くの品が見つかっています。14世紀に入ると仏教文化の勢いが下落して、イスラム、中国各王朝文化の影響が加わりますが、18-19世紀ごろは市街地に住むチベット人らの中で中国の影響を受けた吉祥文様のチベット家具が広く好まれたといわれています。

 このように、チベットの家具デザインは古い時代から受け継がれてきたモチーフに新しい解釈を加えながら、1000年以上も洗練とアートとしての質を高めていくことになります。
 
 チベット家具は本来、遊牧や定住、もしくは僧院など、それぞれのライフスタイルを営んできたチベット民族が、その生活、世界観、宗教観を色濃く反映した生活用品であり、現在では、大変貴重なアートとして扱われています。

 現在、チベット人が手放したチベット家具の多くは、中国の各地を経由して世界に流通し始めています。しかし、1966年から始まった文化大革命の時代に家屋などの建築物だけでなく、家具類も大量破壊されたため、現存している本物のチベットのアンティーク家具は非常に希少で価値の高いものです。すでに数多くの貴重なチベット家具が欧米を中心に取り引きされ、個人や美術館等で所有されていますが、その希少さゆえ、チベット家具は高値で取り引きされており、同時に非常に巧妙に作れた模造品も多く出回っている現状も見られます。
copyright QOLM Co.,Ltd All rights reserved.